愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
自分の部屋で白いブラウスと薄手のカーディガン、ワイドパンツに着替えをし、二階の洗面所で顔を洗ってから一階に下りた。

階段はリビングの端にあり、そこだけ吹き抜けのようになっている。

携帯電話の操作でカーテンを開けると、顔を出したばかりの太陽が朝もやの煙る都会のビル群を淡く照らしていた。

成美はエプロンを着てキッチンに立ち、朝食の支度をする。

朝陽の起床時間は七時頃で、朝食にはヨーグルトや果物、コーンフレークなどの軽いものがいいと希望されている。

昔から寝起きでしっかりとした朝食は取れないらしい。

しかし成美は小鍋を出して、ワカメと豆腐の味噌汁を作り始める。

アジの開きを焼いて大根おろしにキュウリの浅漬けを用意し、冷蔵庫から作り置きのひじきの煮物を出した。

最新式の炊飯器から炊き上がりのメロディが流れ、家庭科の教科書に載っていそうな和朝食が完成した。

これは自分用である。

昨夜の情事の疲れを引きずっており食欲は湧かないが、手抜きは一切しない。

一日の始まりの朝食はしっかり食べるというのが、子供の頃からのルールだ。

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