愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
放送は十分間で深呼吸して終わろうとしたら、リビングの奥から朝陽の声がした。

「なにやってんの?」

「あ、朝陽さん……!」

ボタンを留めずに無地のパジャマを羽織った朝陽が、寝起きのぼんやりした顔で階段の途中に立っていた。

二階まで聞こえないよう音量はかなり下げていたのに、なぜ気づかれたのか。

ラジオ体操は健康にいいと思っていても、夏休みの小学生みたいだと思われそうで恥ずかしく、成美は赤い顔で慌ててラジオを止めた。

「うるさくしてすみませんでした。もう終わりましたので七時まで寝ていてください」

朝陽に向けて深々と頭を下げた。

なにも言わずに階段を下りた朝陽が成美の前に立ち、しゃがんで下から顔を覗く。

「もしかして、毎朝ラジオ体操していたの?」

「えーと、その、はい……」

真面目すぎだと笑われる気がしてますます顔に熱が集中したが、彼は真顔だ。

目を泳がせる成美を見ながら、なにかを考えているような顔をする。

無言で観察されているだけの数秒に耐えられず、成美は両手で顔を覆って床に両膝を落とした。

「すみません。見なかったことにしてもらえませんか?」

「なぜ?」

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