愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「生きづらさを感じているんだろ? それなら変わろう。もっと気を緩めて、楽しく暮らせるようになろう」

「あの、私にとっては簡単じゃないんです。ルールを破るとどうしても、悪いことをしている気分になってしまうんです」

「それなら、こうするのはどう? 俺が新しいルールを作る。ルールを守っていると思えば、罪悪感は生まれない」

成美の胸にひと筋の希望が差し込んだ。

自分ではどうにもできない不自由な真面目さを、夫が壊してくれる気がしたのだ。

「やってみます。新しいルールを聞かせてください」

張りきって問えば、朝陽に優しく頭を撫でられる。

「週末に教えるよ。楽しみにしていて」

お洒落なイタリア製の壁掛け時計を指さされ、七時十分前なのに気づいた。

これ以上は話し込んでいる時間がないようだ。

「はい。週末を楽しみに待っています」

久しぶりにワクワクと胸を高鳴らせ、朝の支度の続きに戻った。



新しいルールが聞けるのを心待ちにしながら数日を過ごし、土曜日になった。

ひとりきりのリビングで壁掛け時計を見ると、十七時五分をさしていた。

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