愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
場違いにククッと笑ってしまうと、驚いたような一同の視線が集まる。

「規約違反は我々に迷惑をかけまいとする真面目さが原因だと、そう言いましたか?」

急に朝陽の口調が丁寧になり、佑大が面食らっている。

「そうだけど……」

「しかし鹿内さんは学生時代に私にこう言いました。『あの子は真面目すぎて駄目だ』と」

言った本人はすっかり忘れているようで、首を傾げつつ不安げに朝陽を見る。

「及川成美という女子高生について、あなたが言ったんですよ」

「ああ、セーラー服に三つ編みのあの子。思い出したよ。どんな大人になったんだろう。真面目すぎてきっとつまらない人生を送っているんだろうな」

なぜ急にその話を持ち出したのかと言いたげな元友人に、朝陽は冷笑する。

「成美の人生がつまらないというなら、それは夫である私のせいです」

「えっ!? そうだったのか。失礼なことを言ってすまない」

「妻は今も真面目ですよ。本当に真面目な人は、いくら苦しくてもルールを守ろうとするんです。規約違反は絶対に犯しません。失礼」

憤りを足音に表し、応接室を出た。

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