愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
ドアが閉まる直前に、「お待ちください!」と木崎社長の悲痛な叫びが聞こえたが、控えていた田島が立ち塞がって追いかけてこられないようだ。

(無駄な時間を過ごした)

足早に執務室に戻りながら、苛立ちを押さえようと別の視点で振り返る。

(佑大がああいう性格でよかったんだ)

もし彼が成美になびいてもらえなくても諦めずに追いかけ続けていたなら、朝陽は友人の恋を応援する立場を守り続けただろう。

しかし佑大が成美に興味を失ったため、それなら自分が声をかけても文句はないだろうと思い、朝陽は駅の改札口で待ち伏せた。

しかし下校時間のはずなのに彼女は現れず、その日以降、曜日を変えても二度と見かけることがなかったのだ。

縁がなかったと諦めたが、大人になってからもふとした時に白いセーラー服の清廉な彼女が頭に浮かんだ。

望んでも手に入らなかった悔しさや寂しさが、いつまでも心の隅に居座った。

スポーツジムでの再会は幸運だった。

このチャンスを逃すまいとして、結婚までの道筋を真剣に模索した。

言いくるめて成美が結婚を承諾してくれた時には、態度には出さなかったが喜びで舞い上がりそうな心境だった。
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