愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
(一体、いつまで母に気を使わなければならない?)
母は過去に一度、自殺未遂をしている。
朝陽が卒業と就職を控えた大学四年の二月のことで、夜遅くに帰宅したら睡眠薬を過剰摂取して昏睡した母が、手首を切った状態で玄関で倒れていたのだ。
理由は寂しさだった。
仕事人間の父は社屋近くのマンションで寝起きするのが昔から常態化しており、家に帰ってくるのは月に一度、あるかないかである。
兄は前年に大学院を修了してアカフジ電機に就職し、それと同時にひとり暮らしを始めた。
ふたりとも家庭を顧みない冷たい性格なので、母の愛情と執着は朝陽に強く向けられていたように思う。
朝陽も就職したらひとり暮らしを始めるつもりで準備していたのだが、ついにひとりぼっちになると思った母は耐えがたい寂しさに襲われ、自殺を図ったようだ。
それで社会人になってもしばらくは実家を出られず、母とのふたり暮らしがその後三年ほど続いた。
メンタルクリニックに通わせて母の精神状態が落ち着いた頃を見計らい、住み込みの家政婦を雇ってから朝陽はやっとひとり暮らしを始めた。
しかしその後も朝陽への執着は止まらなかった。
母は過去に一度、自殺未遂をしている。
朝陽が卒業と就職を控えた大学四年の二月のことで、夜遅くに帰宅したら睡眠薬を過剰摂取して昏睡した母が、手首を切った状態で玄関で倒れていたのだ。
理由は寂しさだった。
仕事人間の父は社屋近くのマンションで寝起きするのが昔から常態化しており、家に帰ってくるのは月に一度、あるかないかである。
兄は前年に大学院を修了してアカフジ電機に就職し、それと同時にひとり暮らしを始めた。
ふたりとも家庭を顧みない冷たい性格なので、母の愛情と執着は朝陽に強く向けられていたように思う。
朝陽も就職したらひとり暮らしを始めるつもりで準備していたのだが、ついにひとりぼっちになると思った母は耐えがたい寂しさに襲われ、自殺を図ったようだ。
それで社会人になってもしばらくは実家を出られず、母とのふたり暮らしがその後三年ほど続いた。
メンタルクリニックに通わせて母の精神状態が落ち着いた頃を見計らい、住み込みの家政婦を雇ってから朝陽はやっとひとり暮らしを始めた。
しかしその後も朝陽への執着は止まらなかった。