愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
寂しさを解消させられなくても、紛らわせるくらいはできそうな気がした。

しかしぎょっとした顔の夫に慌てて止められる。

「頼むから無茶しないでくれ。妊婦にストレスは大敵だろ」

「ストレス? それでしたら心配いりません。私、真面目すぎる硬すぎると言われて学生の頃はクラスで浮いた存在だったんです。ですから拒否されたり、嫌われたりするのに慣れています」

「慣れるなよ……」

呆れのため息をついた夫が、「さて」と立ち上がった。

「夜は冷えるから、続きは帰ってから話そう」

「でもお母様のネックレスをまだ見つけていません」

「ネックレスの一本くらいなくしても困らない。タンスの引き出し二段分がジュエリーで埋まっていたはずだ。たかがネックレスだと本人も言っていたぞ」

(それは違う)

午前中から必死に探していた様子で、諦めると言った時にはひどく落胆していた。

大切な思い出のあるネックレスだと成美は確信しているが、結婚指輪しかアクセサリーを身につけない朝陽には想像できないのかもしれない。

辺りはすっかり夜の様相で探すのが困難だが、諦めきれない思いでいる。

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