愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
夫の母は洗練された身のこなしで踵を返すと、玄関ホールから続く廊下の奥へとサッサと行ってしまう。

「田中さん、朝陽たちにお紅茶とケーキを。使いかけの茶葉は駄目よ。新しい缶を開けてちょうだい」

「はい、奥様」

家政婦への指示を聞く限り、歓迎されているようだ。

夫と顔を見合わせた成美は一緒に吹き出し、慌てて口を押えた。

「母さんはああいう性格なんだ。すまないな」

「いいえ、お茶を飲もうと言っていただけて嬉しいです」

目上の人に対して失礼かもしれないが、夫の母のツンデレな性格を可愛いと感じた。

嫁として認めないと言っても、本心では結婚を許そうとしているのではないかと期待も湧く。

心を弾ませて上がらせてもらい、夫の案内でリビングに入る。

古い洋館のような素敵なインテリアに感嘆し、アンティーク調のソファに朝陽と並んで腰かけた。

家政婦の田中がニコニコしながら苺たっぷりのショートケーキと紅茶を出してくれる。

「朝陽さんの奥様は紅茶でよろしいですか? コーヒーの方がお好きでしたら、すぐに淹れ直してきます」

「いえ、私も紅茶がいいです。妊娠中なのでコーヒーを避けているんです」
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