愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
優しい説得が心にしみて、今度は冷静に考えてみた。

(朝陽さんの言う通り、人それぞれよね。私はもっと休まなければいけないのかも。でもやっぱり清香のお世話は自分でしたい。どうすれば……そうだ!)

成美は夫の手を強く握り返して提案する。

「あの、ベビーシッターではなく家政婦さんでは駄目でしょうか? 家事を手伝ってもらえるだけで助かりますし、もし具合が悪くなったら朝陽さんに連絡してもらえます」

「育児を手伝ってくれる人の方がいい気がするんだが……」

廊下から微かにナースコールの音が聞こえている。

夕日の差し込む特別室で、自分たち家族のためになにが一番いいのかと、夫婦は時間をかけて話し合った。



月日は流れ――よく晴れた初秋の日曜日。

すくすくと成長した清香は今日、一歳の誕生日を迎えた。

「成美さん、バースデーケーキはお食事の後でいいですか?」

「お料理と一緒にテーブルに出してください。清香の機嫌がいいうちに、ろうそくフーッをやってしまおうと思うんです」

自宅のキッチンで成美と話しているのは、家政婦の牧(まき)。

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