愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
和食の豪華なコース料理が運ばれてくる。

昆布締めにした鯛に、甘海老とウニのジュレなど、洗練された美しい前菜の盛り合わせが出され、刺身にハマグリの吸い物、煮アワビと続く。

(こんなに柔らかいアワビは初めて。上品で薄味なのに、しっかりお出しがしみている。すごく美味しい)

今日のお見合いにかかる費用はすべて相手が持ってくれると、事前に聞いている。

父が蒸発する前でも口にしたことのない豪華料理に、舌も心も喜んだ。

日々のささやかな食事に不満を感じていなかったが、無意識に食の贅沢を我慢していたようだ。

食事中の会話は主に、朝陽と母の間で交わされる。

話題は朝陽の仕事で〝アカフジソリューションズ・テクノロジー〟というアカフジ電機のグループ会社に勤めているそうだ。

「弊社は画像認識AIシステムや自動車の自動運転、音声入力システムや製造業の加工組み立てラインなどのデジタルソリューション事業を手掛けています」

「最先端技術のお仕事なんですね。私には難しくて想像もできません。ねぇ成美?」

母が同意を求めてくるので、やむなく「はい」とひと言だけ返事をする。

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