愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
料理はメインの黒毛和牛のステーキが出されたところだ。

箸で食べられるようカットされており、ミディアムレアの断面が美しい。

醤油ソースが香ばしく、山葵が添えてある。

朝陽の箸使いは上品だが男性らしい大胆さもあり、成美の口には少々大きなカットのステーキをひと口で頬張る。

「美味しいですね」

「は、はい」

「先ほどお母様にハードルが高いとおっしゃっていただきましたが、そんなことはありません。成美さんの方こそ素敵な女性です。あまりお話していただけませんが、あなたの心の清らかさや奥ゆかしさは伝わります」

お世辞とわかっていても心臓が波打った。

彼は自然な笑みを浮かべており、口調はなめらかで、心からそう思っていそうに聞こえた。

(女性を褒め慣れているのよ、きっと)

ステーキを口にして気を紛らわせ、高鳴る動悸を鎮めようとしたけれど、そうはさせまいとするかのように追撃の褒め言葉をもらう。

「その振袖は京絞りの友禅ですね。よくお似合いです。美しい着物を着こなせるのは、あなたが美しいからでしょう。もっと堂々とされていいと思いますよ」

< 37 / 282 >

この作品をシェア

pagetop