愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
それで話題を変えるためにも早速、今日の目的に踏み込む。

「藤江さん、お見合いの日に聞けなかった話を教えてください。スポーツジムでお会いする前に、私をどこで知ったんですか?」

「その話は食事をしながらにしよう」

一拍置いてそう言われ、なかなか教えてくれない彼の態度に成美は不安になった。

「本当に前から知っていたんですか?」

「疑ってる? そうか。成美さんからしたら俺はまだよくわからない相手だよな。信用してもらえなくても致し方ないか」

残念そうな顔をした彼だが、すぐに気持ちを切り替えた様子で口角を上げた。

「本当だよ。到着まで退屈しないようにヒントをあげよう」

ウインクつきでそう言って、内緒話をするかのように成美の耳に口を寄せる。

「俺が知っている君は、可憐な白いセーラー服を着ていた」

故意に色気を含めたような甘い声が耳と髪にかかり、心臓が大きく波打つ。

ビクッと肩を揺らしたらクスリと笑われ、近すぎる距離が戻された。

白いセーラー服は一年生の秋まで通った私立の名門女子高の制服だ。

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