愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「藤江さんはいつ予約したんですか?」

不思議に思って問いかければ、なぜそこに引っかかるのかと言いたげに首を傾げられた。

「帰国した日に予約を入れたよ」

(ほんの数日前。たまたまキャンセルが出たのかな)

考えていたら、「入ろう」と彼が真鍮のドアノブに手を伸ばした。

「待ってください、この服でも大丈夫でしょうか?」

それも入店前に確認したい問題だ。

新調したばかりのワンピースだが値段は手ごろで、格式高い店のドレスコードに合っているのか不安になった。

「もちろん。とても素敵だから心配いらない。まぁどんな服装でも、俺と一緒なら入れるけどね」

「えっ、普段着でもいいんですか? 場の雰囲気を壊してしまうからお断りされるのかと思っていました」

「一般客として入店するなら、そうなるね」

どういう意味だろうと目を瞬かせたら、朝陽がドアノブから手を離した。

成美に向き直った彼はジャケットのポケットから小箱を取り出す。

白い布張りで青いリボンがかけられたそれは見るからにジュエリーケースで、戸惑う成美の前で彼はサッとリボンを解いて蓋を開けた。

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