愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「ドレスコードが気になるなら、これをどうぞ」

差し出されたのはイヤリングだ。

三カラットはありそうな大粒ダイヤを小粒のダイヤが取り巻き、バラの花のようなデザインで、その下に美しく光沢を放つ真珠がぶら下がっていた。

「本当はデートの締めにお礼として贈ろうと思っていたんだが、順序はどうでもいいか。つけてあげよう」

成美の横髪に男らしい指が触れ、大きく心臓を波打たせた。

その手を握るようにして止めると、焦ってブンブンと首を横に振る。

豪華なイヤリングをつければ着ているワンピースもグレードが上がって見えそうで、この店に似合う客になれそうな気はする。

けれども真面目な性分のため受け取りを拒んだ。

「今日、ご馳走していただけるだけで心苦しいのに、このように高価な贈り物はいただけません」

「値段は気にしないくていい。成美さんに似合うと思って選んだんだ。断られるより、喜んでもらえた方が嬉しい」

「私は気にしてしまうんです。いただく理由がないのに、こういうのは――」

「理由はある。俺が君にこれをつけてほしいと思ったからだよ。じっとしていて」

「あっ」

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