愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「三度目の出会いに乾杯」

シャンパングラスを持ち上げた朝陽が片目をつむる。

気取ったようには見えず、自然な仕草に思えた。

緊張しながらグラスに口をつけた成美は、シャンパンの味わいにハッとした。

「美味しい……」

会社の飲み会でのビールとは大違いで、味わって飲みたいと思うほど美味だ。

「芳醇な甘みのあるシャンパンだ。パイナップルと桃、蜂蜜とナッツの味がするだろ?」

そう言われてふた口目を口にしたが、成美にはソムリエのような感想は出てこない。

「すみません、フルーティーな感じはしますが、蜂蜜とナッツはよくわかりません」

会話が弾むよう同調すべきところかもしれないが、持ち前の真面目すぎる性分が嘘をつかせてくれなかった。

そういうところが面白みがないと思われ、子供の頃から友人が少なかった原因だろう。

けれども朝陽は退屈そうにせず、ハハッと明るく笑った。

「予想外の返答がくるから、成美さんと話すのは楽しいな。感じ方は人それぞれで、蜂蜜とナッツが不在でもなにも問題はない。大切なのは、一緒に美味しいと感じる気持ちだ」

< 67 / 282 >

この作品をシェア

pagetop