愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「鮮魚とオマール海老のオペラ仕立てと、ホタテ貝とトリュフ、醤油もろみのヴィネグレットソースでございます」

ほのかに醤油の香りのソースが白い皿に弧を描き、三層の魚介のタルタルの上にはキャビアとウニが飾られていた。

添えられている飾り切りの野菜が、花束のようだ。

朝陽がためらわずにナイフを入れたのを見て、成美もそっと端を崩して口にする。

すると立体的で複雑な旨味が一気に口内に広がり、口元を押さえて目を丸くした。

「どうした?」

「美味しすぎて……舌が驚いてうまく話せません」

肩を揺らした彼が白ワインのグラスを手に楽しそうに言う。

「緊張が解けたようだね。それじゃあ、食事しながら謎解きも始めようか。予想はついた?」

心はすっかり料理に向いていたため一瞬なんのことかと思ったが、すぐに車内で言われた〝白いセーラー服〟というヒントを思い出した。

「藤江さんは女子高に通っていた時の私を知っていた、という意味ですよね。男性とは接点がないのに、どうして……あ、文化祭にお客様としていらしていたんですか?」

はたして文化祭で見かけた程度で記憶に残るものかと疑問には思う。

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