愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
空になったスープの皿が下げられ、旬の花咲ガニと舌平目にハーブが香る絶品クリームソースがかかったポワソンが出された。
成美はカトラリーを構えず、彼の返事を待っている。
朝陽が飲むワインは料理ごとに取り替えられ、新しいものを口に含んで頷いた彼が食べなよというように手で成美のポアソンを差す。
「君の名前は大学で同じ専攻の友人から聞いた。鹿内佑大(かうちゆうだい)と言えば、わかる?」
「鹿内さん……あっ!」
名前を言われて、おぼろげに顔が浮かんでくる。
明るい茶色の短い髪をした狐目の大学生で、体形はひょろっと細く、背はあまり高くなかったように思う。
どんな服装だったかまでは覚えていないが、ファッション誌を愛読していそうなお洒落な人だった。
鹿内と出会ったのは梅雨時の電車内だ。
成美は始発の駅から乗車しているため座っていて、その日は小テストのために英単語帳を開いて集中していた。
駅を通過するごとに車内は混雑してきて、成美は英単語から意識を離して周囲を見た。
(お年寄りや小さな子や妊婦さん、具合の悪そうな人はいないようね)
成美はカトラリーを構えず、彼の返事を待っている。
朝陽が飲むワインは料理ごとに取り替えられ、新しいものを口に含んで頷いた彼が食べなよというように手で成美のポアソンを差す。
「君の名前は大学で同じ専攻の友人から聞いた。鹿内佑大(かうちゆうだい)と言えば、わかる?」
「鹿内さん……あっ!」
名前を言われて、おぼろげに顔が浮かんでくる。
明るい茶色の短い髪をした狐目の大学生で、体形はひょろっと細く、背はあまり高くなかったように思う。
どんな服装だったかまでは覚えていないが、ファッション誌を愛読していそうなお洒落な人だった。
鹿内と出会ったのは梅雨時の電車内だ。
成美は始発の駅から乗車しているため座っていて、その日は小テストのために英単語帳を開いて集中していた。
駅を通過するごとに車内は混雑してきて、成美は英単語から意識を離して周囲を見た。
(お年寄りや小さな子や妊婦さん、具合の悪そうな人はいないようね)