愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
電車内で積極的に席を譲るのは成美にとっての当たり前だが、その日は必要がなさそうだった。

代わりに気になったのは、目の前に立つふたり組の女子高生だ。

成美と同じ白いセーラー服を着ており、学年ごとに色の違うスカーフから三年生だとわかる。

通っている女子高は規律が厳しく、髪形やスカート丈はもちろんのこと、前髪の長さや眉の太さ、下着の色まで決められている。

一年生は校則違反の生徒をほとんど見かけないが、三年生にもなるとうまくチェックの目をかいくぐり、お洒落を楽しむ生徒が少なくない。

目の前の彼女たちもウエスト部分を折り返してスカートを短くし、髪は肩についているのに結わえず、リボンのついたヘアピンまでつけていた。

(先生に叱られないのかな。学校に着いたら校則通りにするのかも)

行き過ぎた真面目さで、たとえ上級生相手でも間違ったことは注意したくなるのが成美である。

けれども彼女たちのルール違反は他人に迷惑をかけているわけではないので、目をつむることにした。

英単語の暗記に戻ろうとしたが、一度彼女たちを気にすると集中できず、ヒソヒソ声での会話を聞いてしまう。

< 72 / 282 >

この作品をシェア

pagetop