愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
「問題と言いますか、藤江さんとお話しするのは三度目で、お互いによく知らないのにいきなり結婚はおかしいと思うんです」

焦りながらも真っ当な意見を述べたつもりでいたが、朝陽に首を傾げられた。

「それなら俺はどうすれば君と一緒にいられる? 交際しないとお互いを理解するのは難しい。だが君は結婚前提でなければ交際できないと言い、理解し合えていない状態で結婚できないと言う。矛盾しているよ」

「そう言われると……」

反論できなくなった成美は眉尻を下げて彼を見る。

チョコレートブラウンの瞳は優しい印象で、誠実そうな顔をしてじっと見つめ返してくる。

けれども片側の口角がほんの少し上がっており、逃げ道のない方へ成美を追い込もうと企んでいるかのようだった。

「判断に迷ったら、俺は直感を信じるようにしている。君は俺と一緒にいて楽しい?」

「はい。楽しいです」

「これきりでおしまいではなく、また会いたいと思う?」

「はい。ぜひ、またお話したいと思います。藤江さんがご迷惑でなければですけど」

形のいい唇が勝利を確信したかのように、はっきりと弓なりになる。

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