愛してると言わせたい――冷徹御曹司はお見合い妻を10年越しの溺愛で絆す
白いセーラー服を着ていた時の自分に惹かれ、今も興味を持ってくれているという話を信じて交際したとしても、朝陽とは結婚に至らないだろう。

世が世なら身分違いも甚だしいといったところだ。

朝陽は微かに眉を寄せ、ブランデーグラスをゆっくりと円を描くように揺する。

中の液体を見つめてなにかを考えているような顔をしていたが、数秒して口をつけずにグラスを置いた。

真っすぐな視線を成美に戻す。

「君の考えを尊重して、恋人になってと言ったのは取り消す」

「そう、ですか……」

自分から断ったのにホッとするのではなく残念に思い、胸がチクリと痛んだ。

(これでいいのよ)

納得しようと自分の心に言い聞かせ、青いカクテルに視線を移したら、彼が続きを口にする。

「言い直そう」

(なにを?)

逸らした視線を真顔の彼に戻すと――。

「俺と結婚して」

思いがけないプロポーズに成美は目を丸くした。

にわかには信じられず、動揺して聞き返す。

「あの、私とですか?」

「そう。俺の妻になってほしい。なにか問題でも?」

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