モノクロに君が咲く
◇
「──なあ、結生。今、なに考えてる?」
「べつになにも」
「ふうん」
とくに大きな事件が起こることもなく、滞りなく無事に卒業式を終えたあと、俺は屋上庭園へとやってきていた。三月上旬にしては温かい気候の恩恵か、例年よりも桜の開花が早い。この屋上庭園に飢えられた桜の大樹も、半分ほど蕾を開かせていた。
ちなみに隼は勝手についてきただけだ。
「春永先輩。相良先輩も。よかった、ここにいて」
そんな俺たちを追うようにやってきたのは、鈴の友人たちだった。
「おー、久しぶりだな。ふたりとも」
馴れ馴れしく手を振る隼を横目に、どこかほっとしている彼女たちを見る。
「綾野さんと岩倉さん……だよね。俺たちになにか用?」
「相変わらず冷たいなー先輩。あたしたち、鈴の代わりにお祝いに来たんですよ」
「鈴の」
「お、食いついた」
岩倉さんはけらけらとからかい交じりに笑う。
けれど、やはりふたりともどこか元気がない。それも当然か、と俺は心のなかで鈴の名前を紡いだ。君がこのふたりの隣にいないのはすごく寂しいよ、と。
「時間が経つのは、早いね。ついこの間、君たちとここでごはん食べたばかりなのに」
「ほんとですねえ」
「はは、懐かしいこと言いますね、春永先輩。鈴のことばっか見てたくせに」