モノクロに君が咲く
「マジでこいつはいつだって小鳥遊さんしか見てなかったよ。呆れるほどな」
「うるさい、隼。……安心しなよ、そんな学校生活も、もう終わりなんだから」
あと一週間ほどすれば、この桜の大樹も満開になるだろう。
ここだけでなく、多くの桜が。そうして散りゆく桜に触れるたびに、俺は否が応でも鈴を思い出すのだ。彼女と過ごした日々を、花弁のひとつひとつに重ねて。
「──卒業、おめでとうございます。おふたりとも」
「おめでとうございます、先輩たち」
後輩たちの温かな祝福に、俺と隼は苦笑しつつ顔を見合わせる。
「おう、ありがとうな。なんか俺、めちゃくちゃついでな気がするけど」
「そんなことないですって。春永先輩への用事がメインですけど、ちゃーんとお祝いはしようと思ってきましたよ」
「そ、そうですよ。聞きました、おふたりとも大学に進まれるんですよね」
綾野さんの言葉に、隼が肩をすくめながらうなずく。
「まぁな。俺は地元の大学だけど、こいつは東京の某美大だよ。ったくサラッと合格しちまうあたり、ホント結生だよな。あーあ、天才ってのは嫌だねえ」
「なにそれ」
「悪口だよ。もうマジでおまえがひとりでやって行けるとは思えねえんだわ、俺。定期的に生存確認しに突撃するからな。覚悟しとけよ、バカ結生」
……寂しい、のだろう。きっと。そういうことにしておいている。
俺が美大に合格したことを報告したときはあんなに喜んでいたくせに、それからだんだん卒業が近づくにつれて、面倒くさい絡みをしてくるようになったのだ。