モノクロに君が咲く
体力のない体はあっという間に悲鳴を上げ始めるが、そんなの気にしていられない。
卒業生が集う廊下をすり抜けるように駆け抜けて、俺は職員室へ飛び込んだ。
「っ、失礼します!」
「お、おお? 春永か、どうした」
扉の近くに座っていた先生の横を通り過ぎて、俺は目当ての人物を探した。すぐにそのうしろ姿を見つけ駆け寄る。もはや周囲のことなんて見えていなかった。
「先生っ」
「お、春永じゃないか」
まるで俺が来るとわかっていたかのような態度だ。
その肩をいささか乱暴に掴みながら問いかける。
「金賞は誰ですか」
「ああ、いやぁ、残念だったな。高校生活最後の絵画コンクール銀賞──六連覇ならず。でもまあ、モノクロ画家春永結生の真骨頂として話題になってるぞ」
「先生!」
俺の質問には答えようとせずはぐらかす先生に苛立って詰め寄った。しかし、先生はまったく態度を崩すことなく「まあ落ち着け」と苦笑しながら俺の肩を叩いた。
「悪いが、俺の口からは言えない。誰が金賞を取ったのか、それは『部長』であるおまえ自身が確認するべきことだからな」
「っ……」
「今年の展示会はちょうど二週間後から。入賞者は無料で入れるし、行ってこいよ」
もうほぼ、確実だった。
間違いない。金賞は、鈴だ。
自惚れているわけではないが、俺を追い越す可能性があるとしたら彼女しかいない。
それこそ次点を死守し続けていた鈴が今年もコンクールに応募したというのなら、その可能性は充分、有り得る。
むしろ、ここでぽっと出の高校生が出てくるのだけは勘弁してほしい。
二週間。──二週間も、待たないといけないのか。