モノクロに君が咲く



 いざ展示会場に着くと、なぜか隼が入口でみんなを引き止めた。

「俺はさ、気の遣える男だから言わせてもらうけど。別行動しようぜ」

「別行動?」

「俺たちはまず、入り口近くに展示されてる佳作や優秀賞の作品たちから見ていく。ゆっくりな。だけど、結生。おまえはひとりで先に金賞を見に行けよ」

 え、と喉の奥からかすれた声がこぼれる。

「仮に金賞が小鳥遊さんの作品だったとしたら、それはおまえへの贈り物だ。このなかの誰よりも先におまえが見る権利があるだろ」

 語気強めに言い募る隼の言葉に、女子たちが顔を見合わせてうなずきあう。

「……そうね。そうしましょうか」

「いいんじゃないですか? あたし、他の作品も色々見たいし」

「うんうん。わたしも!」

 でも、という声は、隼に背中を押されたことで遮られた。

 面食らいながら振り返ると、隼は面倒見のいい兄のような顔をして「ほら」と顎で行けよと促してくる。ぶっきらぼうながら、そこには諭すような強い思いがあった。

「気になってんだろ、結生」

「っ……うん。ありがとう」

 俺はひとこと言い残し、タッと走り出した。

 例年、展示会の構造はほぼ変わらない。入口近くから始まり、順序通り奥に進むにつれて賞の格がだんだんと上がっていく。つまり、最も優秀たる金賞は最奥だ。

 俺は途中の作品にはいっさい目もくれず、真っ直ぐに毎年自分の絵が飾られているエリアへと向かう。朝一だからか、まだ観覧客はまばらだ。館内では走るなと注意されそうだが、運よく警備員と遭遇することなく、目的の場所まで辿りつく。

 そして、俺の足は止まった。

 A4サイズよりも二回りほど大きいF6キャンバス。金賞と冠を被ってそこに飾られていたそれは、受賞者の名前を見るまでもなく、鈴の絵だとわかった。

「……す、ず」
< 210 / 217 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop