モノクロに君が咲く
◇
いざ展示会場に着くと、なぜか隼が入口でみんなを引き止めた。
「俺はさ、気の遣える男だから言わせてもらうけど。別行動しようぜ」
「別行動?」
「俺たちはまず、入り口近くに展示されてる佳作や優秀賞の作品たちから見ていく。ゆっくりな。だけど、結生。おまえはひとりで先に金賞を見に行けよ」
え、と喉の奥からかすれた声がこぼれる。
「仮に金賞が小鳥遊さんの作品だったとしたら、それはおまえへの贈り物だ。このなかの誰よりも先におまえが見る権利があるだろ」
語気強めに言い募る隼の言葉に、女子たちが顔を見合わせてうなずきあう。
「……そうね。そうしましょうか」
「いいんじゃないですか? あたし、他の作品も色々見たいし」
「うんうん。わたしも!」
でも、という声は、隼に背中を押されたことで遮られた。
面食らいながら振り返ると、隼は面倒見のいい兄のような顔をして「ほら」と顎で行けよと促してくる。ぶっきらぼうながら、そこには諭すような強い思いがあった。
「気になってんだろ、結生」
「っ……うん。ありがとう」
俺はひとこと言い残し、タッと走り出した。
例年、展示会の構造はほぼ変わらない。入口近くから始まり、順序通り奥に進むにつれて賞の格がだんだんと上がっていく。つまり、最も優秀たる金賞は最奥だ。
俺は途中の作品にはいっさい目もくれず、真っ直ぐに毎年自分の絵が飾られているエリアへと向かう。朝一だからか、まだ観覧客はまばらだ。館内では走るなと注意されそうだが、運よく警備員と遭遇することなく、目的の場所まで辿りつく。
そして、俺の足は止まった。
A4サイズよりも二回りほど大きいF6キャンバス。金賞と冠を被ってそこに飾られていたそれは、受賞者の名前を見るまでもなく、鈴の絵だとわかった。
「……す、ず」