君の矢印【完】
「え、」
不意に携帯を見るとどんでもない数の通知数だった。
全部律くんから…
電話もメッセージも何十件も来てた。
震える手でメッセージを開こうとタップしかけたとき、
ブブブーーーー
『着信:律くん』の文字。
急いで応答にスライドする。
「っ、いこいっ」
「り、律、くんっ、…さっきはごめんなさいっ、ごめんねっ、…うう、私…」
声を聞いた瞬間、何かが崩壊して涙が止まらなくなった。
ああ、安心する大好きな律くんの声だ。
「いこい大丈夫か!?今どこ?」
いつもクールな律くんの、史上最高に焦ってる声。
「うう、分からないの……歩道橋…っ」
無我夢中で走ったけど、カラオケから遠いことしかわからない。
周りは住宅街だし、ここはどこなんだろう。
「すぐ行くから。位置情報送って。電話もずっと繋げてて。」
電話越しに聞こえる走ってくれてる息遣いと、服の掠れる音、風の音。