君の矢印【完】
「もう着くからっ」
電話越しの声。
安心して腰が抜けたのか、一歩も動くことが出来なくなって、歩道橋の階段に座り込む。
夜の住宅街だからか人は1人もいない。
それが余計怖くて、俯いて律くんを待つ。
合コンなんて行った私がバカだった…
律くんの忠告を聞かないからこうなるんだ…
震えが止まらない。
「いこいっ」
電話の音声と、目の前の音が一致した瞬間。
顔を上げると、息をあげている律くんの姿。
汗が街灯に照らされて輝いてる。
「…り、律くんっ」
目の前に現れた律くんに、思わず抱きつく。
会いたかった…怖かった…
もっと強く抱きしめようと、ぎゅうと力を入れた時。
「ちょ、」
ドンーーーー
勢い余って、階段から足を踏み外した律くん。
抱きついていた私もそのまま階段から落ちていってしまった。
「痛っ…」
はっ、と気がつくと律くんが私の下敷きになっていた。