君の矢印【完】
「私のどこがバカなの!」
「こんなに言っても、俺の気持ちに気づかないところ。」
また訳のわからないことを言ってる。
「わからないよ!」
律くんは昔から、掴みどころがなくて、意地悪でわかりにくいよ。
「もう一度言うけど、俺は好きな人としかキスはしない。俺はいこいにキスをした。つまり?」
じっと揺るぎない目で見つめられて、高騰する顔の熱。
時が止まった気がした。
覚束ない考えの中。
向かない矢印が向いてるってこと?本当?
そんなことあるの?
…つまり、律くんの好きな人って…
「…つ、つまり、律くんの好きな人は私…?」
「正解。」
やっとたどり着いた答えに、
満足げに、嬉しそうにそう呟く律くん。