紅葉踏み分け、君思ふ

ドッキドキの剣術勝負!-2-

次の試合は初めて見る人たちだ。

(えっと確か・・・平山五郎対佐伯又三郎だったよね。何した人だっけ・・・?)

記憶の中を彷徨った結果、平山五郎は芹沢さんと共に暗殺された人で、佐伯又三郎は女関係で芹沢さんに殺されたか、長州藩の藩士に殺されたモブっぽい感じの人だったことを思い出す。

(うーん。この二人は正直どっちが強いとかわかんないや)

二人は普通に竹刀で試合をする。

「そこまで!勝者、赤!」

結局買ったのは佐伯さんだった。

(うーん・・・さっきのと比べると地味だね、うん)

「かえでちゃん、かえでちゃん!次ぼくだよ!」

「え?総司さん?ここにいていいの?」

突然肩をつかまれて振り返ったら総司さんがいた。ちなみに襷の色は白だ。

「んーん。もう行かないと。でもちょっと言いたいことがあって」

「何?」

彼はわたしの言葉に少し微笑んでから耳元でささやく。

「ぼくの活躍、ちゃーんと見ておいてください、ね?」

(へ?ちょ、)

総司さんは言いたいことだけ言ってさっさと待機位置に行ってしまった。

(ちょ、あざとい・・・)


「第四試合!沖田総司藤原春政対山南敬助藤原知信!」

笑顔で前に進み出る二人。

(でも、笑顔が、笑顔が凍ってる!)

「初め!」

互いに礼をした後、正眼に構える二人。

(あれ?木刀じゃない。なんで?)

そう。二人が持っていたのは木刀ではなく竹刀。

(天然理心流って木刀で訓練する事を主としているはず。山南さんはともかく、総司さんにとってはちょっとハンデなんじゃ・・・?)

しかし、そんな考えは杞憂だったよう。

「はぁ!」

「やっ!」

(は、速っ!さっきの試合が遊びみたいに感じる・・・!)

人狼の血が入っていて動体視力が半端ないわたしは兎も角、普通の隊士達には何が起こっているのか全く分からないんじゃないのか、そんなぐらいのスピード。

(あ。だから総司さんたちを最後にしたんだ・・・)

ふ、と気づいた。この試合を組んだ人はそれを狙っていたのではないか?

(最初は技術、次は力。そのあと一回休憩として普通のレベルの剣術を見せて最後に今までで一番の技術とスピードを見せる)

そうする事で見ている人にとっては彼らの実力が実際の何倍にも大きなものだと見せられる。

(それに、竹刀にしたのも・・・)

前の試合と同じ条件にしたかったからだ。それに持っているものが軽いとその分スピードがでる。

(でも、総司さん達にとって竹刀で試合をするのには慣れてないはず。なのにここまでスピードが出てるってことは・・・まさか、試合があるって予想して予め練習させておいたってこと⁉︎)

この試合は急遽決まったはずだ。なのにそれを全く感じさせない。

(誰が決めたのかはわからないけど、これ組んだ人・・・相当頭が良い・・・)
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