紅葉踏み分け、君思ふ
スッと襖が開いて土方さん、総司さん、一さんが先に中に入る。わたしhばとりあえず源さんと廊下で待機。

土方さんは近藤さんの耳元で何かを耳打ちし、それを聞いた近藤さんが小さく頷いて隣にいた山南さんにつたる。一方、反対側では総司さんが平助くんに耳打ちをしている。

幹部たちの耳打ちリレーが終わったことを確認した一さんが近藤さんと源さん、そしてわたしに合図を送る。合図を確認した近藤さんがわいわいと食べていた隊士たちに一回自分の方を向くように伝える。

「昨日から話題になっている者についてだ。あー彼女がみんなに自己紹介したいと言うことだ。かえで、入ってこい」

「頑張ってくださいね」

源さんの言葉に小さく頷いて大広間に入る。三十人ほどの視線がわたしに突き刺さる。

(うぅ、こんなに緊張するの・・・総司さんたちと話した時だわ。もっと前かな、って思ったけど・・・)

あの時豊玉さんの句を思い出して少しリラックスしたところで自己紹介。

「えっと、本宮かえでといいます。諸事情で挨拶していませんでしたが、今日から浪士組の一員としてやっていくつもりです。よろしくお願いします」

そう言ってぺこりと頭を下げる。顔を上げると全員の表情は二つに分かれていた。

まず近藤さんをはじめとするわたしの保護者グループ。こっちは「よくできました!」みたいな笑顔をわたしに向けている。

それと対照的なのは一般隊士たち。「なにあいつ」みたいななんとも気持ち悪くなるような視線をわたしに向ける。

「なぁ、あいつ、女子だろ・・・?」

「なんで土方さんが許したんだ?」

人狼の力のせいで隊士たちの言っていることがよく聞こえてしまう。がまんがまんと思いながら自分の席(総司さんと一さんの間)に行こうとした時。

「あいつ、髪桃色だぞ・・・?気持ちわる・・・」

ブチっと何かが切れた音がした。わたしはその場に立ったまま顔だけ声がした方に向ける。どこか冷静な頭が今の音が堪忍袋の尾が切れた音だと教えてくれる。

(女子だって言うのは我慢できたよ。だって本当のことだもん。でも、お母さんからもらった、髪のことを悪く言うのは、許せない・・・!)

「ねぇ、いまわたしの髪を気持ち悪いって言った人、だぁれ?」

笑顔で問うとわたしの視線の先のうちの一人がビクッと肩を震わせる。

「あぁ、あなたぁ?そんなに、わたしのことが気に入らないのぉ?」

「あ、あぁ、そうだ!」

わたしの挑発に乗った形でさっき肩を震わせた男が立ち上がる。

「そう、そうなの・・・それなら、わたしと勝負しない?わたしと剣術勝負?どう?もしあなたが勝ったらわたし、ここを辞めてもいいわよ?」

「なっ、その勝負、受けてたつ!」

「そぅ、あ、他にもわたしに不満があるなら受けるわよ」

わたしはさっきよりも口角を上げて言い切る。

「全員、相手してあげる」

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