奈落の果てで、笑った君を。
尚晴side




「いいですか?必ずふたりのそばを離れてはいけませんよ」


「うん!」


「些細なことだとしても一緒に行動すること」


「うんっ」



念入りに言い聞かせるのは、与頭である男だった。

本当に分かっているのか…?と、俺は朱花を見るたびに毎回思ってしまう。


だとしても今日は俺と早乃助さんがついていることだし、気を抜くつもりはないが朱花も安心なのだろう。



「まさか本当に朱花を花街に連れて行くことになるなんてねー」


「これは任務ですよ早乃助。気を緩めてはなりません」


「もっちろんでーす」



そう、これは潜入任務なのだ。

誰もが少女の爆弾発言には驚いたが、それでも朱花に何かを与えたいという気持ちは本当だった。


あれから数人で話し合った結果、見廻組はとある男を追っていたという話題が出た。


そいつは蕪木 弥彦(かぶらぎ やひこ)という脱藩浪人で、この京の町に潜伏しているという噂があった。



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