奈落の果てで、笑った君を。




「どうして新撰組は武士じゃないのに武士になろうとするの?」


「…あはは、ずいぶんと直球だ」



悪気は無かった。
聞きたいことは、そのまま聞いてしまう。

たぶんそれはわたしの良いところでもあって悪いところ。



「僕は別に武士になりたかったわけじゃないよ。ただ……強くはなりたかった」


「つよく…?」


「すごく弱かったんだ。…でも近藤さんと出会って僕の人生は変わった。だから彼が望むものになりたかった、ただそれだけ」



近藤とは、あの石みたいなキョクチョーのこと。

その人が武士を望んだから、ここまで一緒についてきたんだと。


それくらい沖田 総司にとってかけがえのなくて、大好きな存在だってことだ。



「これ、土方さんに言うと舌打ちが返ってくるんだけど。……僕は本当は武家の生まれでもあるんだよ」


「え、そうなの…?」


「うん。ただ…両親は僕が生まれてすぐに死んじゃってね。それから近藤さんがいる道場の内弟子になったんだ」



本当のところなんて誰にも分からないと思った。

この世の中は、見た目や噂だけで決めつける人間で溢れていると。



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