奈落の果てで、笑った君を。
大丈夫、あのふたりはきっと生きる。
尚晴は俺が信頼している何よりの弟分なんだから。
そいつはまあ、俺のことを兄貴分だなんて思ってくれてはないだろうけど。
「もう…徳川の世は……、終わりなのだ…、」
「っ、」
完全には殺しきれていなかったらしい男がゆらりと立った。
俺の落ちていた刀を拾うと、そのまま俺へと向けてくる。
朦朧とする意識のなか、俺の最期はこうなるのかと、心のなかでは笑っていた。
「滅べ旧幕府軍めええええ……!!!」
ちがう、そんなことどうだっていい。
徳川が滅ぼうが、旧幕府軍が負けようが、俺にとってはそこまで大きなことでもない。
俺たちはただ、あの子を守っただけだ。
あのクソガキを、化け物の子だなんてワケわからないこと言われてる少女を。
出会って数年は経っているはずなのに何も変わらない女の子を。
新撰組の言葉を借りるとするなら。
俺たち見廻組の“誠”は、朱花の笑顔だってこと。
(楽しかったなあ……)
もうそれしかない。
こうすればよかった、ああすればよかった、思うところは考えたらあるんだろうけど。
なにも考えずパッと浮かぶ気持ちがあるとすれば……楽しかった、ただそれだけ。