奈落の果てで、笑った君を。
「様子はどうかな忽那くん。手拭い、すぐ乾いてしまうんじゃないかい?」
「あ、すみません今井(いまい)さん」
コトン───、何かがそばに置かれた音。
ちゃぷん───、何かが水を弾いた音。
「だいぶ熱は引いてきたようなんですが、ただ呼吸が」
「ああ…、確かに苦しそうだね。ちょっとお粥を作ってくるよ」
「ありがとうございます」
あつい、つめたい。
ふかふかする、あったかい。
しょうせー、しょうせい、尚晴。
「───…しょう…せい…」
うっすらと開いた目。
ぼやける視界がだんだんとはっきり見えてくると、いちばん最初に映し出された男がひとり。
「…まだ辛いだろう。もう少し眠るといい」
昨日見たときとは、また違って見える。
そんな目をしていたんだ、そんな口をしていたんだ、そんな着物を着て、そんな声をしていたんだ。