奈落の果てで、笑った君を。
「はい只三郎!この雪の玉あげる!」
「……朱花、私と君は敵同士ですよ」
「え?仲間だよ?だって只三郎だもん!」
誰がこの子の行動を予測できるだろう。
だれが、この行動の裏を探ろうとするだろう。
裏なんてないのだ。
この子は、この子が思ったとおりに屈託なく動いているだけなのだから。
「…佐々木さん、朱花にはまず敵や味方という概念がないんだと思います」
「…ふふ。ありがとう朱花。では一緒に早乃助を倒そうか」
「うん!!」
「え、ちょっと。なんで俺の場合は概念が生まれちゃうんだよ」
ここには朱花を敵に見る者などいない。
他の隊士たちだって恨む前に溶かされてしまっている。
今も部屋から覗いては「いけー!」なんて応援が始まった。
何度もいろんな人間たちが足で踏んでは固め、ぎっしりと地面に敷き詰められていた雪は。
こうして照らしてくれる強すぎる太陽の力で、ゆっくりと溶けていくのだろう。