奈落の果てで、笑った君を。




「んんー、明日オレたち早番だから勘弁してくれって…」


「おーい忽那!世話役はなにしてんだァー」


「ほら閉めてくれ朱花。俺が明日買ってきてやっから」



首根っこを掴まれるように、ひょいっと部屋の外へ追い返されてしまった。


どうしよう、ぜんぜん見つからない…。

もしかすると誰かに捨てられちゃったのかも…。



「朱花、見つかったぞ」


「…え?」



落ち着いた声に、ふるっと揺れた視界は元どおり。

そこにはわたしの大切な宝物を手にして向かってくる尚晴がいた。



「かざぐるま!!!」


「押し入れに入っていた。大方、今朝は布団に一緒にくるめてしまっていたんだろう」


「ありがと尚晴!!」



けれど、受け取ろうとするとスコッと天井に上げられてしまう。

こういうときの尚晴はいつにも増して無表情だから、なにを考えているのかよくわからない。



「しょうせ───わっ!」



抱えられていたのは、わたし。

いまだに風車を渡してはもらえず、尚晴に抱き上げられるまま視界は動く。



< 96 / 420 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop