見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
「伊織さん、ここ知ってたの!?」
「うん、俺もよく来てたよ。大学も近いしな」
ここは市内のラーメン屋。
ケンとカイが俺に紹介したいと、早目の昼飯で一緒に来た。
「なんだー、知ってたのかぁ」
「ここのおやっさん、ガッツリ食わせてくれるからな」
「そーなんだよ!だから俺達もよく来てんの」
ちなみに乃愛は俺達を「いってらっしゃい!」と笑顔で送り出し、実家で待ってくれてる。
やはり体調的にガッツリのラーメンはキツいらしい。
二人と並んでカウンターの席に座ると、がらがら声が特徴の店主のおやっさんが声をかけてきた。
「おっ?誰かと思ったら伊織じゃねぇか!久しぶりだなぁ」
「おやっさん、久しぶり。相変わらず元気そうだね」
「おぉ、元気でやってるよ!何だ、相川兄弟と知り合いか?」
「おっちゃん、伊織さんは俺らの兄ちゃんになるんだぜ?」
「兄ちゃん?…なんだぁ?乃愛ちゃんの旦那になるってか?」
「「ピンポーン!」」
「はーぁ!世の中どこでどう繋がるかわかんねぇモンだなぁ!ハッハッハ。よぅし、正月早々めでてぇ話を聞いたからな、今だけチャーシュー増量っ!」
そう言って、店内にいる4~5人の客の丼にチャーシューを数枚ずつ入れていった。
もちろん俺達の丼にも。
「「おっちゃん、ありがとう!」」
「なぁに、俺の祝いの気持ちよ。乃愛ちゃんもこっち来てんのか?」
「うん、家にいるよ」
「なんだぁ、乃愛ちゃんにも会いたかったなぁ」
「じゃあ空港行く時にまた寄って顔見せよっか?」
「おぅ、手間じゃなけりゃそうしてくれや」
久しぶりなのにそれを感じさせない会話と懐かしい味を、弟たちと楽しんだ。
「おやっさん、ごちそうさま。味とボリュームは変わんないね。旨かったよ」
「「おっちゃん、ごちそうさまでしたー」」
「ハッハッハ、また食べに来いよ」
おやっさんの声を背に店の出入口のドアを開けると冷たい風が当たったが、熱いラーメンで火照った体には気持ちがよかった。
「んじゃ家に戻るかー、姉ちゃん待ってるしなー」
「そだなー」
快斗の車に戻ろうとした時にスマホが震えた。
見ると園田からだった。
なんだろ。
「園田?」
『あっはい、園田です。九十九さん、お休みのところすみません。今少しいいですか?』
「あぁ、どうかしたか?」
『すみません…昨日の夜の話なんですが…楠さんがまたおかしな事を言ってまして…』
昨日の夜…?
「何だ?」
『九十九さんが店を出られてから、楠さんが九十九さんと一緒に過ごしていたと他のスタッフに話してたんですよ』
「あぁ、その話か。あのさ今、相川兄弟と一緒にいるんだけど、通話をスピーカーにして一緒に話してもいいか?」
『あっはい、こっちは俺一人ですし全然構わないんで』
ケンとカイに「昨夜の話」と言い、スマホをスピーカーに切り替えた。
「それで、何て言ってんだ?」
『それが…ホテルに入って過ごしたと…』
「それは嘘っすよ、園田さん。あ、俺、快斗です。俺、店を出てからの伊織さんの一部始終見てるから」
「カイの言う通り。一度、腕を引かれてホテルの入口に引き込まれたけど、すぐに出たのはカイが見てる」
「うん見た見た。マジ引っこ抜かれた感じだったもん」
『ですよね…俺も九十九さんがそんなことするはずないと思って。…それでどうしましょうか。このまま言わせておくのはまずいと思うので』
「そうだな……すまないが園田から本人にも周りの奴らにも否定しておいてくれるか?それで『嘘を言って仕事に支障が出たらただではすまない』と、俺の言葉として伝えておいてもらえると助かる」
『わかりました。そう言っておきます。また何か変な動きをするようなら連絡させてもらいますね』
「悪いな、本来の仕事外の事で面倒かけて」
『いえ、俺は九十九さんに育ててもらいましたから、これくらいのことは喜んでさせてもらいますよ』
「すげぇ、伊織さん。人望厚いね!」
「伊織さんの人柄だよな!」
「ありがとな、園田。恩に着るよ」
『いえ。それでは失礼します』
……はぁ
「面倒なことにならなきゃいいけどな…」
「まぁ清廉潔白の証拠はあるし、姉ちゃんも信じてんだから大丈夫っしょ」
「そーそー。それにあの女の言うことを信じる人も少ないだろうしさ」
「…お前達は本当にいい子だよな」
「へへっ、伊織さんに褒められたな」
「な。姉ちゃんに自慢しよ。じゃ、家に戻るか」
ほんと、俺は乃愛と出逢ってから幸せの道を歩いているみたいだな。