見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

「私、前の結婚生活であまりお金をかけない生活してたから、こういうのにお金を使うことに慣れてなくて躊躇しちゃって。…でも、伊織にそう言ってもらえるの、すごく嬉しい。ありがとう。ふふっ、伊織が選ぶ?それとも一緒に見る?」

「んーそうだな…俺が選んで、それを乃愛が気に入ってくれたらそれが一番嬉しいな」

「うん」

「…あのさ、乃愛の堅実な金銭感覚は偉いと思うし、俺は好きだよ。こう見えて俺も無駄遣いはしたくないタチだから。でも、使うべきところにはちゃんと使いたいって思ってるんだ」

「…あ、だから指環を買うなら信頼できるところで、って考えたんだ」

「ふ、よくわかったね、その通り。ヘタな買い物はしたくないんだよね、俺。だから、モノによっては店はすごく選ぶんだよ」

「あ……うん、それ…わかるかも…」

伊織の考え方がじわじわと私の体に抵抗なく吸収していくのがわかる。

…何となく思い出してきた。
昔は私もそういう思考だった、と。

それがいつの間にか宏哉の金銭感覚に飲み込まれて…内容が何であれ「お金のかかるもの」には使わなくなっていったんだ。

だから結婚式も披露宴もせず、指環もこんな風に二人であれこれ選んだりしなかった。

宏哉に『毎日つけてたらすぐにキズもつくしそこそこ安いのでいいよね』と言われて、選ぶという選択肢もなくシンプルなペアリングになったんだった。

愛が無いわけではなかったと思うけど…こうして伊織と指環を選んでいると、どうしても比べてしまう。


最後に宏哉と二人で話し合った時も「早く出世して多く稼いで、早く家も買って、乃愛にラクさせてやりたかった」って言っていたから、当時はとにかくお金を貯めたかったのかもしれない。

…けど、私はラクをする生活よりも、二人で働いて仲良く暮らしていく方が幸せだと思うから、その時点で私達の考え方は合わなかったんだ。

……そっか……
私と宏哉は最初から結婚生活の考え方が全く違っていて、それに対して私もぶつかっていかなかったから…こういう結果になったんだ。


私もこの経験を伊織との結婚生活に活かそう。

うん、意見が違っても我慢しないで、ちゃんとぶつかっていかないとね。
伊織はしっかり聞いてくれる人だから、私も伊織の意見をしっかり受け止める人になろう。
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