見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
食事を終え、横浜の伊織のご実家まで電車を乗り継いでいく。


その車内で、伊織が私の手を握ったまま、小さい声で話し始めた。

「乃愛、今の仕事、楽しいか?」

「仕事?…うん、まあそれなりにやりがいは感じてるけど…私の仕事がどうかしたの?」

質問の意図がわからずにいると、伊織が少し顔を曇らせた。

「……乃愛は……もし俺が『仕事を辞めて家にいて欲しい』って言ったら……仕事、辞めてくれるか?」

「専業主婦、ってこと?」

「あぁ…」

「でもどうして?」

「…今は土日休みにしてもらってるけど、来月辺りからまた平日も土日も関係なく仕事が入るようになるんだ。だから平日の休みになる方が多いと思う」

「そうだったんだ……今まで私の休みに合わせてもらってたんだね…ありがとう」

先月…12月は本当に色んなことがあって精神的に不安定だったり生活もバタバタしていたから…

私を心配してそうしてくれていたのだとわかり、そのありがたさと愛情に涙が溢れそうになって…握られている手にキュ、と力が入る。


確かに…スポーツクラブはサービス業だし、伊織が土日に休んでいる事に疑問を持ったこともあるけど、役職や職種によってはそういうこともあるのかなと…突っ込んでは聞かなかった。


「そっか、休みが合わなくなるから、ってことだよね」

「ん…俺の我儘なのはわかってる。けど…」
と…伊織が一段と顔を曇らせた。


だから。

「いいよ。それなら仕事を辞めて、専業主婦として伊織を支えるよ、私」

まっすぐに伊織を見て、断言した。

「…いいのか……?」

「うん。ただ、これから会社に話してみてだから、来月いっぱいは働かなきゃだと思うけど」

「それは構わないけど…やりがいのある仕事なのに…ごめんな…」

「ううん。仕事を頑張る事も大事だけど、私は自分の仕事よりも伊織との生活を大事にしたい。二人の生活で収入に不安があるなら私も働くけど、伊織がそう希望するのなら専業主婦として支えたい、って思ってるから」

もう一度、まっすぐに伊織の目を見て言った。

「乃愛…ありがとう…俺、マジで泣きそう」

「ふふっ、二人っきりだったら『私の胸で泣いていいよ』って抱き締めてあげるんだけど」

「ふ…ありがと。その気持ちもすげぇ嬉しい」
少しだけ涙目の笑顔に、胸がきゅうって掴まれる。

あぁ、かわいい……
って男の人に思うのはヘンかもしれないけど。
今日は伊織がかわいく見えることが多くてドキドキしちゃうな。


「…俺、前の離婚のきっかけが仕事だったからさ……言うの、結構悩んだんだ」

「そうだよね……怖かったよね」

「ん…怖かった」

「ありがとう、ちゃんと言ってくれて。…言わずに一人で抱えられるのは…私も辛いから」

「…乃愛はそうだったな。はは、俺達は似てないようで似た者同士だな」

「ほんとだ…そうだね」
ふふっと伊織に微笑むと視線が絡んだ。

「…今、抱きたくてしょうがないんだけど」

耳元で不意に言われたその言葉を心が理解すると、ボッと顔が熱くなった。

「…そうゆうの…外で言わないで…もぉ」
空いてる手でほっぺたを覆って言うも、伊織は「かわいいなぁほんとに」と笑いながら私を見ていた。
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