見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
「もう11時半か。じゃあ…昼飯食って親父からサインもらって帰るか」

「うん、そうだね。あ…長居しちゃってごめんね」

「いや、俺も楽しかったよ。新しいことを知るってワクワクするよな」

そう言って笑った伊織は私の手を取ると指を絡め、近くに見えたイタリアンレストランに向かって歩き始めた。

今日は新幹線で来たから、こちらでの移動は電車。

たまにはこういうのも楽しいな、って思ってたら、伊織から「そういえばさ」と切り出された。

「さっき…指環を選んでた時さ……何考えてたの?」

伊織のちょっと真面目な表情。
もしかしたら気付かれたかな…前の結婚生活の事を思い出してたって。

…でも、楽しいことじゃないから…

だから、あの時考えてた事を全部話した。




「…だからね、伊織との結婚生活ではちゃんと言いたいことは言おうと思って」

「そっか、今が幸せ過ぎて自然と思い出されて、結果、比べちゃったってことだろ?前の旦那には悪いけど、俺としてはそれは素直に嬉しいな」

「ん…ごめんね、伊織と一緒にいるのに思い出してしまって…」

「いや…俺もそういう時あるよ、乃愛と同じ理由で。…当時はそれがベストであり当たり前だったのに、あれは無理してたんだなー、って思うことがね」

「…伊織もあるの?…大好きな公佳さんとの結婚だったのに?」

「公佳にはほんっとに妬かないのな……まぁいいや。…あぁ、あるよ。今思えば、だけどな。今、こうして乃愛と過ごしてると、昔は自分が出せてなかったんだな、って気付いたりさ」

「私もそう。結婚してからは特に全然自分が出せなくなってたけどそれが普通だったの。…それがね、伊織には自然と素の自分が出せているの。それがすごく嬉しくて、心が気持ちよくてね」

「わかる!心が気持ちいいのな!」

伊織と顔を見合わせて、二人で笑顔になる。

「でも、まさか指環を選んでる時に過去の結婚生活の反省をするとは思わなかったけどね」

「いや、そういう大きな違いがある事で気付かされることあるよな」

「伊織はいつも肯定してくれるよね、ありがとう。…あ、たまに『やだ』って否定されるけど、それはかわいいから許しちゃうんだけどね。ふふっ」

その『やだ』を思い出したら、つい笑みがこぼれちゃった。


「……抱きしめていいか?今」

「はっ?え?何で今」

「乃愛、可愛すぎ」

って…伊織の目に妖艶な色が見えてきた。

けど、レストランはもう目の前。

「あっ、もう着くよ!それは帰ってからね。今は『やだ』はナシね」

そう私が言うと「……わかった…」って口を尖らせて言うのがかわいくて、何かご褒美をあげたくなるの。

「帰ったら、私からキスするから…それで我慢してくれる?」

って、こんなことでご褒美になるのかわからないけど。

すると伊織がフッと笑った。

「それで我慢する!って思うとか、マジで乃愛に手懐けられてんなー俺。ははっ。よし、じゃあまずは飯食おう。腹減った!」

と私の手を引き、レストランの入口へと向かった。
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