見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

ちゃぷん…

「はー……あったかいぃ…」
「だなー……あー…気持ちいー…」

全身を洗った後、二人でバスタブに浸かりじっくり温まる。

「今度温泉行きてぇな…二人で」

「いいね、温泉!」

「二人で貸切の露天風呂入ってさー……旨いもん食ってさー……んで乃愛の浴衣を『あ~れ~』って脱がしてさー……ははっ、すげぇ楽しみしかねぇな」

「あはは、そこに『あ~れ~』が入るんだ」

「浴衣なら必須シチュエーションだからな」

「そんなにしたいんだ、それ」

「ん、したいの、それ」

「あはは、伊織ってばかわいい」

「…なんか年下の乃愛にかわいいって言われるのが嬉しいんだけど、俺、おかしいか?」

「ふふ、おかしくないよ?」

「つーか、乃愛が年下に思えない時が結構あるんだよな。なんか安心しちゃって甘えたくなるんだよ」

「ほんと?…それ、すごく嬉しいな。私もね、伊織を甘えさせたいなって思うことがあるの。…今もそう思ってるんだけどね…」

甘えさせたいのに…やっぱり照れちゃう。

すると、伊織がお湯の中で私の腰を持ち上げ、自分の腿の上に跨がらせた。
…それまで少し見上げていた目線の高さが逆転する。

「乃愛からキスしてくれるんだよね?俺に甘えさせて?」

私を少し見上げる目から、男らしさと甘さの相乗効果抜群の色気が駄々漏れている。

そんな妖艶な伊織を見下ろしていると、母性本能なのか征服欲なのかよくわからない心の何かを刺激されて……
気付けば、伊織を愛しいと思うままに、伊織の頬を両手で撫でながら深く口づけていた。

伊織の舌を探す私の舌は、私の気持ちそのもので…
見つけたら抱きついて離さない…
そう言っているかのよう。


唇から離れるときれいな首筋が目に留まり、唇で触れたくなった。

……何だろう、この気持ち……
伊織が愛しくて愛しくて…伊織の全てに口づけたくなる。

「伊織の全部…愛したいな…」

伊織の男らしい首筋や鎖骨、背中を撫でながら…唇にキスを落とした。

普段なら恥ずかしくて絶対言えないんだけど、今なら言える。というより、言いたくてたまらないの。


「…どうしたの、乃愛……ヤバイくらい色っぽい…」
蕩けた表情に上ずった声で、私の腰に腕を回して言う。

「伊織に私の気持ちを…伝えたくて…愛してるって…」

「ん……ちゃんと伝わってる。すげぇ受け止めてるから、乃愛の想い。……俺がどんだけ乃愛を感じてるかわかる?」

「うん…わかるよ…」
私が跨いでいる下から…私に入りたがってる彼を感じるもん…

「でも…その前に…私に伊織を愛させて…?」

「ん……俺を愛して、乃愛…」


そして私達はベッドルームに移り、私は心の赴くままに伊織を愛した。

まだテクニックといったものは全然ないから……いつも伊織が私にしてくれるような愛撫を真似することしかできないけど、私の気持ちを行為で表したかった。

伊織は何も言わず、私に手も出さず、ただ嬉しそうに私の好きにさせてくれた。


…時折…伊織が漏らす熱を帯びた吐息が、私の心にまた火を点ける。


伊織を、抱きたい……


私は避妊具を伊織に装着すると、自ら迎え入れた。

…私の中の伊織が喜んでいるのがわかる…

「…あぁ…幸せ過ぎてマジでヤバい……こんなに求められてこんなに幸せって…初めてだ」

伊織が嬉しそうに私の頬に手を伸ばす。

その伊織の指に、私の指を絡めた。

「ん、私も幸せ……想いをこんな風に表せるんだね……それをこうして…幸せって言ってもらえると、こんなに嬉しいんだね…」

心の全部で喜びを感じる。


きっと伊織に出逢わなければ、こんな喜びがあるなんてわからなかった。
そして、私もこんな自分から行動を起こすことなんてできなかったと思う。

ありがとう…と指を絡めた伊織の手に優しくキスをすると。

「ね、乃愛……俺も…乃愛を愛したい。…ほんとに乃愛が愛しくてたまらないんだ……いい?」

そう言って、伊織もまた繋いだままの私の手に優しくキスをした。

私を見つめる伊織の目は、その気持ちが溢れ出るほど優しくて妖艶で。

その瞳に私の心がどくりと反応し、それまでの〝伊織を愛したい〞から〝伊織に愛されたい〞に変わった。


「伊織……私を愛して…」

私のその一言から……
……幸せな長い夜が、始まった。
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