見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~

最後に「イメージとして見て頂ければ」と、初夏のガーデンウェディングの様子を映した動画を、フェア会場脇の広いエントランスホールにある大きいテレビ画面で見せてもらった。


わぁ……素敵……

花と緑あふれる芝生の広いお庭。
色とりどりのお花と白のチュールで飾られたアーチ。
優しく降り注ぐ陽射しの中で、たくさんの人に祝福されてる、これまた素敵なお二人…

あれ、この人達って…と頭が思い出そうとしていると。



「あー、パパとぉ、ママだぁ」


というかわいい声が聞こえた。
その声のする方を見ると、そこにいたのは3歳位の…たぶん男の子。

か、かわいいっ!

水色のモコモコ防寒着を着た、おめめぱっちりでほっぺぷっくりの小さい子が、テレビ画面に向かって指をさしてる。

「伊織…すっごいかわいい子だね…」
「だなー…」

あまりにも可愛くてまじまじと見ていたら「こらっ、旭(あさひ)。またお前はちょろちょろと」という声と共に、その子がダウンジャケットを羽織った男の人にひょいと抱っこされた。

視界に入ってきたその男の人…は。
この動画の人!
あ、さっきあの子がパパって言ってたよね!

っていうか…そうだ!あの例のCMの人だ!

うわぁ…ほんとにイケメンさん…

目が離せないでいると伊織もこの人に気付いたみたいで「マジか」って小さな声が聞こえた。


そこへ「子供がお邪魔してごめんなさい」という女性の声に振り向くと、そこにはやはりこの動画というか例のCMの人が!

うわぁ…ほんとに美人さん…

また目が離せないでいると、やはり伊織もまた「マジか」って呟いた。
うん、気持ちはわかるよ。



「千紗(ちさ)、ごめんね、お客様のお邪魔しちゃって」
と、その女の人は北条さんに話し掛けた。

よく見るとその人は桜色のモコモコの防寒着を着た小さな子を抱っこしていた。手袋をはめた小さな手が女性の肩を掴んでいる。

「ううん、大丈夫だよ。…あ、九十九さん、相川さん、こちらの二人が今見て頂いてるこの動画の新郎新婦ですよ」
ニコニコと北条さんが私達にそう教えてくれた。

「ですよね!ていうか…あの、CMの方ですよね。あと【バズっしょ】にも出られてた…」

って言ったら、女の人がぎょっと驚いた。
「ごっご存知だったんですか?や、恥ずかし…」

「麻依(まい)、今更恥ずかしがってどうするの。ふ、もう麻依の可愛さは全国区で知れ渡ってるんだよ?」

「ちょ、諒(りょう)!人様の前でそういうこと言わないの」

「な、旭、ママは可愛いよな?」
「うんっ、ママはかわいいのっ」

「あわわ…ちょっとやめて…」

「あはは、ほんと諒くんの溺愛は結婚前から変わらないよね」

「当たり前じゃないですか、ていうか、あの頃よりもっと溺愛してますから。ね、麻依?」

「ん…そうだね、ふふっ」

「パパー、もっかいゆきだるまつくるー」

「よし、パパとでっかいの作るか!…じゃあ麻依、ちょっと行ってくるな。麻依とはるひは風邪ひかないように中にいて?」

「ん、ありがと。旭、他のお友達にぶつからないように気をつけるんだよ」

「わかったー。はるちゃん、いいこでねんねしててねー」

旦那さんは「失礼します」と私達に会釈すると、息子さんと手をつないでエントランスを出ていった。


「ほんと仲いいよね、諒くんと麻依」

「ふふっ、そうだね。諒にはほんと感謝してる。…ってごめんなさい、私がお邪魔しちゃってましたね」

「あっいえ、お話しできて嬉しいです。よかったらお二人の結婚式の時のお話とか聞きたいです!」

すっごい興味がわいてきちゃった。
だってこんなに素敵で幸せそうなんだもん!

「えっ、私達の?うーん…特別なことは何もないですけど…それでもよければ」

「諒くんは結婚式の相談の時、最初からすごかったよね。もう溺愛全開で」

「いや、千紗、そういうのを聞きたいんじゃないと思うけど…」


「え、すごく聞きたいです!ね、伊織?」

「ははは、そうだな、溺愛全開する人ってあまり見ないしな」

「ええぇ…」
ってちょっと困ってる麻依さんが可愛らしくて和んでしまった。

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