見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
部屋に入って、やっと一息つけた。

「はー……」

「乃愛、どうしたんだよ、何があった?」

車の中でも心配してくれてた伊織さんには「帰ってから話すね」と言っておいたため、聞かないでいてくれた。

「ありがとう、伊織さん。心配させてごめんなさい…」

「いいよそんなの。で、何があった?」


…一呼吸して、自分を落ち着かせて…

「…うん……さっき…伊織さん、クラブで女の人と話してたでしょ?受付のとこで」

「見てたの?あっ、何もやましいことなんてしてないからな!」

「ん、そうじゃないの…あのね、あの女の人…宏哉の浮気相手なの」

「えっ!あの人が!?……確か親友だったって人?」

「うん…」

「そっか……それなら話しとくな。実はさ、あの人…逢坂さんていったっけ」

「うん、逢坂葉月」

「あの人、横浜の店舗に来てたんだよ、俺が店長代理してたとこ。で、そこで話しかけられたり食事に誘われたりしてさ。あぁ、誘いは断ってたし、話すのも職務時間内だから必要な事だけだったけど」

「でも、どうしてここに?」

「さっきの話だと、俺がこっちにいるのを向こうのスタッフから聞いたみたいで」

「それで会いに来たの!?」

「…何か通うっつってたから…こっちに住むのかもな…わかんねぇけど…」

「そ…うなん…だ…」

また葉月に大事な人が狙われている…

そう思うと、怖くて…体が震えて…自分で抱き締めた。

すると…

「乃愛」
と優しい声がして、伊織さんのぬくもりに包まれた。


「俺は乃愛のものだ。誰のとこにも行かねぇよ、心も体も。俺は宏哉ってヤツとは違う。乃愛から絶対離れない」


その言葉に顔を上げると、伊織さんの真っ直ぐな眼差し。

「伊織さん……伊織さぁん……」

私は安心したのと嬉しいのとで、なかなか涙が止まらなかった。

そんな私を伊織さんはずっと抱き締めていてくれた。


少しして涙が落ち着いた私に伊織さんが話しかけてきた。

「あの逢坂さんが、乃愛が言ってた葉月って人なんだ…」

「うん…」

「そっか…名前を知ってたら横浜でも気に掛けて警戒したんだけど…迂闊だったな」

「ごめんなさい…」

「違う違う、俺が横浜で逢坂さんの下の名前まで把握しとけばよかったってこと。葉月って名前は乃愛が言ってたのを聞いてたからさ。ほんと興味もない女の下の名前なんて知ろうともしないからね、俺」

「伊織さん…ありがとう…優しいね…」

「乃愛だからだよ、優しくできるのは」

「ん……伊織さん、大好き…」


「なぁ、今日は泊まっていける?」

「あ、うん…明日は土曜日だし大丈夫だけど」

「一緒に寝よ?抱くんじゃなくて、朝まで抱き締めて寝たい」

「伊織さん……」

伊織さんのその優しい笑顔にいつもの妖艶さはなくて。
本当に私を心配してくれてるんだってわかると、抱かれたい…って思っちゃった…

でもまだ治ってないから私もそんなこと言わないけど。



そしてこの日は伊織さんの言った通り、まだ来たばかりの新しいベッドで、伊織さんに抱き締められながら…私は眠りについた。
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