見つけたダイヤは最後の恋~溺愛は永遠の恋人だけ~
「葉月」

私の声に、葉月はビクッと肩を揺らした。

「私は葉月は親友だと思ってた。でも…葉月は違ったんだね」

「違う!親友だと思ってた!でも…みんな…男の子も女の子も…みんな乃愛のとこに行くの…先生からの信頼だってあったし……羨ましかった…」

「私だって、葉月のこと羨ましく思うことあったよ、いくつも」

「そんなの嘘だよ…私なんて全然…」

「大学の2年の頃に葉月が付き合ってた野嶋くん、私、好きだったんだ。誰にも言ってなかったけど」

「え……」

「それに下の学年の子達から慕われてたのとか、それもすごいなって思ってた。他にもたくさんあるよ、私にはない、葉月のいいところ。それ…尊敬してた。自慢の親友だと思ってたよ」

「そんな…」


「ねぇ…正直に答えて。宏哉のこと、好きだったの?だから同じ職場に来たの?」

「違う、本当に偶然なの…でも知ってる顔がいて安心したのはあるけど」

「じゃあどうして宏哉と…そういう関係になったの?」


「本当に最初は知り合いが同僚でよかったって思ってた。でも…仕事で結果が出せないのとか…婚約者が浮気してて…女として自信がなくなったりとか…それでも婚約者との結婚を進める親の事とか…いろんなストレスが溜まっていって……宏哉くんと飲んで愚痴てる内に…」


「…宏哉が好きなの?」

「…そうじゃないの……」

「でも私を悪者にして豚だの何だのって貶してたじゃない。本当は別れればいいと思ってたんじゃないの?」

「違うの…好きとかじゃないの…」


「いや、俺が悪いんだ…」


…そう……

「宏哉は…葉月を庇うんだね」


「違うんだ…俺も同じなんだ…葉月ちゃんと…」


「…どういうこと……?」


「俺……早く出世したくて…業績のいい横浜に来て勉強して、それで本社に戻って早く上にのしあがりたかった。そうすれば乃愛を働かせなくてすむし、早く家も建てて…結婚生活も順風満帆に行くと思って……だけど横浜のメンバーはみんな頭がきれる奴ばかりで…俺…できない自分にだんだん卑屈になってった。その頃に葉月ちゃんがやってきて…俺も知り合いが同僚ってだけだったけど……仕事の愚痴を言い合う様になって…俺が俺じゃなくなってった…」


「それって…どういうことなの?」


「…もう卑屈になりすぎて向上心もなくなって…ぼろぼろで…逃げ場がなくて…同じ様な状況の葉月ちゃんと現実から逃げてた……その時に言ってた言葉は確かに俺が言った言葉だけど……どれも本気じゃ…本音じゃない……本当の俺じゃないんだ……」


「……何で…仕事が辛いことを…私に言ってくれなかったの…?」

涙が…どんどん溢れて……止められない…


「かっこ悪くて……言えなかったよ……本社から支店に来たのに、支店の奴らについていけないなんて…恥ずかしかった……何て思われるか……」

宏哉もボロボロと涙をこぼしていた。


「……私が信用できなかった…?」

「違う!俺が…プライドを棄てられなかった……乃愛の前ではかっこいい…頼れる男でいたくて……だから……ダメな俺を乃愛に見られたくなくて……帰ることもできなくて…」


「それで……葉月に…逃げたの…?」


「…葉月ちゃんにっていうか……最低だけど誰でもよかったんだ…あの状態から一瞬でも逃げられんなら……。俺が俺を保てるようになったら…こんなのはやめるつもりだった…」


「乃愛…ごめん……私も……誰でもよかったの……いっときでも…私を見てくれるなら……だから…好きだって言ってくれた黒田くんも…宏哉くんの事も…好きなわけじゃないの……乃愛の事を悪く言ってたのも…また捨てられるのが怖くて…私を見て欲しくて……ごめんなさい…」


私は言葉が出てこなくて…
ただ涙を流すことしかできなかった…

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