せこいあんたを待ちぼうけ
「……あんた,あたしを何やと思っとるん? 恋人になるかもしれん女に会いに行く男の家で,1人で飲んでるんも充分おかしな話やし。呼ばれた側やのに何時に帰るかも分からんあんたを待ってるみたいになるのも気分が悪い」
あーあ。
ここまでするつもりやあらへんかったんに,熱の入った怒った演技に拍車がかかる。
つっ……と,頬杖を付いた右手と頬の間を,涙が伝った。
「そないバカみたいな真似,誰もせぇへんに決まってるやろ。それくらい分かりぃ。ほんま,サイテーやわ。
えーよ,合コンくらいいくらでも行っとき。どうせあんたなんか誰も相手してくれへんのやき」
全部もう,どうでもいいわ。
全部分かってて,こないなことするんやから。
あたしだって,怒るときは怒るんやから。
だから
「全部あんたの好きにしぃ。あたしはもう帰る。あんたみたいな最低な男,もう知らん」
ザッと私物を一気に仕舞いこんで,立ち上がったあたし。
ポカンと気圧されていた知己は,そこでようやく慌て出した。