無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
 メモに書き込むが、胸の高鳴りが止まらない。

「ありがとうございました」
「ああ。一級建築士の資格を持ってるんだって?」
「えっ!?」
「慎さんに聞いた」
「あっ、はい」
「もっと大きな仕事をしたいと思わないのか?」
「はい?思いません。私は、この仕事に誇りを持っています」

 可愛らしい容姿からは想像できない、強い意志を持った言葉に瑛斗の心は打ち抜かれる。

 反対に、優は瑛斗の言葉が失礼に感じた。長身でイケメンだが、言葉の意図がわからない。もっと大きな仕事とは何を基準にしているのか……。大好きなこの仕事を馬鹿にされた気分になったのだ。

 もちろん瑛斗に悪意はなかったのだが、聞き方が不器用なのだ。

 瑛斗自身も大橋建設での大きい案件よりも、現場の仕事が好きだ。その事を伝えずに先ほどの発言をしたら伝わるわけがない。

 二人の溝はまだまだ深そうだ――。
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