無口な彼の素顔〜職人技に隠された秘密〜
「ちなみに、職人はどなたを?」
「慎さんに頼む。もちろん俺も。正直、職人の立場からしても納得のプランだ。時々わけのわからない現場があるからな」
「専務はほどほどにして下さいね。本社での仕事も山のようにあるんですから」
「兄貴からの依頼なんだ。兄貴に俺の仕事をふったらいいだろう?」
「……」

 瑛斗が職人の顔になっている。これは、何を言っても無駄だろうと皆川は判断した。

 普段から現場に出る瑛斗だが、専務としての仕事はきっちりとこなす。こちらが調整しないと、きっと今回も現場の仕事が終わってから本社に戻って仕事をするつもりなのだろう。冗談ではなく、副社長にふるべきだろう。

「兄貴は?」
「外出中です」
「そうか。戻ったらプランを木島様に確認してもらうように言ってくれ」
「専務は?」
「ちょっと慎さんのところに行ってくる」
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