愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~
その公爵家の法定相続人となれば、
年頃の貴族令嬢たちも黙っているわけがない。
エルマーの元には舞踏会やお見合いの申し込みが殺到していた。

エルマー自身も賑やかな場所が好きだったので
時間の都合が合えば招かれた舞踏会に顔を出していたし、
王都に繰り出してナイトライフを楽しむこともあった。
その場の雰囲気によっては出逢った女の子と一夜限りの関係を楽しむこともある。
いつしか”浮ついた貴公子”という評判が社交界で流れるようになった。

一人の女性と安定的な関係を築こうとしないエルマーを
ユリウス国王も心配して、
「そろそろ落ち着いてもいい頃ではないか」とたしなめていたが、
エルマーはユリウスの言葉を聞き流すばかりだった。
エルマーは女の子のことは好きだったし、
何よりまだ若く遊びたい盛りだったので、
誰かとステディな関係を築くというのはまだ早いと思っていたからだ。

だが先日ユリウスに着いて行ったウィステリアのマスカレードはさすがに反省した。
「旅の恥はかき捨て」というが、
異国の地だということでエルマーの気も大きくなり、
主そっちのけで大はしゃぎしてしまったのだ。
最初の方はそれなりにユリウスのことは気にかけていた。
マスカレード中盤くらいでようやくユリウスがジゼルと2人きりになったことを見届けて、
すっかり安心してしまったのだ。
誘われるがままに羽目を外した結果、
ユリウスに醜態をさらし大目玉を喰らってしまった。
(この件は、死んでも爺ちゃんには知られたくない。)
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