婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
プロローグ
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 内乱の爪跡がまだ残るバランド王国には不似合いな豪華な馬車と、それに連なる馬車や荷車の行列が王城へと入っていった。
 そして、行列の中心である華美な装飾の施された馬車が王城正面扉前へと止まる。
 出迎えの人々が待つ中、別の馬車から飛び降りてきたお仕着せの従僕が、踏み台を用意して馬車の扉を恭しく開けた。
 すると、馬車から大輪の紅いバラが咲いたのかと見紛うような女性が出現し、出迎えの者たちは息をのんだ。
 そんな人々の中でも、表情の変わらない背の高い男性が数歩前へと進み出た。
「無事に着いて何よりだ。あなたがルチア・ショーンティ公爵令嬢か?」
「──はい」
 無礼とも言える男性の態度に、ルチアに従ってきた者たちがざわつく。
 さらには迎える側に笑顔もなく不信感が表れており、ルチアたちが歓迎されていないことはわかった。
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