婚約破棄された公爵令嬢は冷徹国王の溺愛を信じない
 どうやらこの国にまで、悪女ルチア・ショーンティの噂は広まっているらしい。
「そうか。私はこのバランド王国の王、ジュスト・バランドだ。着いて早々悪いが、このまま式を行う」
 ルチアの予想通り、男性は結婚相手であるバランド国王──ジュストだった。
 ジュストの整った顔立ちの中でも意思の強さが表れた碧色の瞳はとても印象的である。
 また、日に焼けた肌は野性的で漆黒の髪と逞しい体を覆った黒い軍服はとても威圧的に感じられた。
 祖国の貴族女性なら恐怖で泣き出したかもしれないが、ルチアは怯むことなく立ち向かった。
「式とは、結婚式のことですか?」
「それ以外に何の式があるんだ?」
「結婚式となると、いろいろと準備があります」
 いきなり今から結婚式だと言われて抗議するルチアを、ジュストは上から下から嫌味ったらしく視線を這わした。
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