悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 確かに、雑貨屋のショーウィンドウにクリストファーが映り込んでいた。私たちから三メートルくらい後ろの街灯の横に立っている。私たちの自宅に来てからまだ帝都に残っていたようだ。ジッとこちらを見つめている。

 ここでも物語は原作とはまったく違う方向に進んでいってる。原作通りならクリストファー殿下が、私たちに執着するはずがないのだ。

 さすがにストーカーは前世を含めても経験がないわ……どう対処したらいいのかわからない……。

 クリストファー殿下の仄暗い視線に鳥肌が立ち、不安でフレッドと繋いでいる手をギュッと握る。

「俺がついてる。大丈夫だ」
「あ……そうね。フレッドがいれば安心よね」

 ほっとして力が抜けた。
 そうだ、私にはフレッドがいる。護衛として今までどんな敵からも守ってくれた。

「ただ、俺のユーリをつけ狙うのは許せないな」

 ほっとしたのも束の間。フレッドが獲物に狙いを定め、隠していた牙を剥いた。


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